ANDO MAGAZINE

沢山遊ぼう。

象の背中

 物心がついたころ、一番初めに思い起こせる記憶は象の背中に乗っていた自分だ。母から聞くに当時6才の僕は、家族と一緒に行ったタイ旅行に、わちゃわちゃとハシャギ回っていたそうだ。しかし僕自身、明確に思い出せる記憶はそれぐらいしかなかった。 象はとても優しい目をしていた。少なくとも、幼き僕がそう感じるという程、深い目をしていたのを覚えている。

 

 少し前にTVで見た生物ドキュメンタリーで、象は縄張り争いをする際、降参の合図を決めていると話していた。合図を見た象はそれ以上の攻撃を辞め、引き下がり、また合図をした象はユックリとその場を立ち去るという。

 それを見て「 賢いなぁ」と呟く僕に、隣で同じ番組を見ていた姉が「殺し合うまでするなんて、人間くらいだよ」と吐き捨てていた。

 

 そんなことは無いだろ。と思いながらも、その日の夜は上手く寝付けなかった。